東京都は少子化対策の一環として、都道府県として全国発の「卵子凍結」する女性に最大30万円を助成する制度を開始。
あくまでも「加齢等による妊娠機能の低下を懸念する場合」に行う卵子凍結に係る費用を助成としており、対象者・対象要件などをクリアする必要があると同時に、気を付けたい注意事項もあります。以下にて詳しく説明します。
【随時更新】新着情報
加藤レディスクリニック(新宿区)
対象医療機関の1つである加藤レディスクリニック(新宿区)では、これまで社会的卵子凍結の場合、保管場所は提携先の外部サービスのみとなっていましたが、2023年10月24日より院内での保管が開始されました。詳しくはこちらをご覧ください。
(社会的卵子凍結の場合は、初診予約は電話のみとなっています。ご注意ください。)
卵子凍結とは
卵子凍結は卵巣から取り出した卵子を-196℃の超低温の液体窒素の中で凍結させ、自身が出産したい・できるタイミングまで保存することです。超低温では化学変化はほとんど起こらないため、卵子の状態を数十年も変化させないまま保存することができると言われています。
卵子凍結には大きくわけて2種あると言われています。
<卵子凍結のタイプ>
① 医学的適応:がんなどの病気が原因で妊よう性(妊娠するために必要な力)の温存のために行う場合
② 社会的適応:健康な女性が将来の妊娠に備えて行う場合
今回東京都が開始した助成制度は、2つめの「健康な女性が将来の妊娠に備えて行う場合の“社会的適応”」にあたります。
卵子凍結について詳しくはこちら ☞ 日本産婦人科学会HP
東京都が開始する2つの助成金制度
今回東京都は2つの助成金制度を発表しました。
助成金制度① これから卵子凍結をする方へ:卵子凍結に係る費用を助成
助成金制度② これまで卵子凍結をした方へ:凍結卵子を使用した生殖補助医療に係る費用を助成
ニュース等では①の「これから卵子凍結をする方へ」が大きく取り上げられることが多いですが、②の「これまで卵子凍結をした方が凍結卵子を使用した体外受精の費用助成」という点も見逃せません。
2022年4月から不妊治療の保険適用が開始されましたが、卵子凍結による凍結卵子を使用した体外受精は保険適用の対象外だったため、この制度上の穴を埋めるように今回の助成金制度が登用されたと考えられます。
東京都の助成金制度の概要
今回東京都は「子供を産み育てたいと望んでいるものの、様々な事情によりすぐには難しい方にとって、卵子凍結は将来の妊娠に備える選択肢の一つ」として、この助成金制度を開始しました。
都道府県で初めての試みであるこの助成は、対象者や条件が明確に定められています。
これから卵子凍結をする方への助成
対象者
東京都に住む18歳から39歳までの女性 ※採卵を実施した日における年齢
主な対象要件
※次のすべてに該当する方が対象
(1)都が開催する、卵子凍結の正しい知識を持っていただくための説明会へ参加すること
(2)説明会への参加を申し込んだ日から都に助成金を申請する日までの間、継続して都内に住民登録をしていること
(3)説明会に参加した後、都が指定する登録医療機関において採卵準備のための投薬を開始すること
(4)未受精卵子の採卵又は凍結後に都が実施する調査に協力すること
(5)凍結卵子の売買、譲渡その他第三者への提供はいかなる場合も行わないこと、また、海外への移送は行わないこと
(6)卵子凍結後も都の実施する調査に対し、継続的に(最大5年間)回答すること
助成額
・卵子凍結を実施した年度 上限20万円
・次年度以降、保管更新時の調査に回答した際に、1年ごと一律2万円(最大5年間)を予定
合計最大30万円
助成金受給までの流れ
・説明会へ申込、参加
・調査協力申請
・決定通知書受領
・登録医療機関を受診
・卵子凍結実施
・助成金申請
・調査への回答
・助成金受給
説明会の日程・申請書類・申請方法
助成制度の最初のステップは「説明会への申込、参加」です。
2023年9月25日からこの説明会の申込が開始されました。説明会については以下のように予約を受け付けています
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・開催場所:オンライン開催
・申込期限:各回の2営業日前の17時(午後5時)まで
・定員 :各回定員150名(先着順)
・注意事項
以下のようなお申込みは、無効とさせていただきます。
※ おひとり2回以上のお申込み
※ 記入内容に不備のあるもの
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※上記情報は2023年9月25日現在
✔ 説明会参加申し込みフォームはこちらから ☞ オンライン説明会 参加申込フォーム (logoform.jp)
✔ 助成金について詳しくはこちら ☞ 東京都福祉局(卵子凍結に係る費用の助成)
これまで卵子凍結をした方への助成
対象者
妻の年齢が43歳未満の夫婦で凍結卵子を使用した生殖補助医療(体外受精・顕微授精)を受ける方
主な対象要件
1~4すべてに該当する方
1)「1回の生殖補助医療」の開始日から申請日の間に置いて、夫婦(事実婚含む)であること
2)「1回の生殖補助医療」の開始日における妻の年齢が43歳未満の夫婦(事実婚含む)
3)「1回の生殖補助医療」の開始日から申請日の間、以下いずれかに該当すること
ア:法律婚夫婦において、夫婦いずれかが継続して都内に住民登録をしていること
イ:事実婚夫婦において、夫婦ともに継続して都内の同一住所に住民登録をしていること
4)医療保険が適用されず、かつ不妊治療を目的としない未授精卵子の凍結保存を実施し、知事があらかじめ登録する登録医療期間において、当該未授精卵子を用いて生殖補助医療を実施したこと
助成額
(1)凍結卵子を融解し、受精を行った場合:1回につき上限25万円
(2)「以前に凍結卵子を融解し作成した凍結胚」を融解して胚移植した場合:1回につき上限10万円
※初めて助成を受けた際の「1回の医療行為」の開始日において、妻の年齢が40歳未満であれば6回まで、40歳以上であれば3回までを助成回数の上限とします。
※1子ごとに回数をリセットすることが可能です。
助成金受給までの流れ
・登録医療機関を受診し、凍結卵子を用いた生殖補助医療を実施
・助成金申請
・助成金受給
申請期限
1回の生殖医療が終了した日の属する年度末(3月31日厳守)まで
例)令和5年12月10日に終了した「生殖補助医療」の申請期限=令和6年3月31日迄
助成対象は指定の「登録医療機関」のみ
今回の2つの助成事業の対象となるのは、東京都が発表した「登録医療機関」での受診・治療のみとなります。
登録医療機関一覧はこちらから。
卵子凍結において注意しておきたいポイント
ここで「卵子凍結」において注意しておきたい2つのポイントをご紹介します。
注意点1:卵子凍結は決して将来の妊娠が約束されるものではない
卵子凍結は「健康な女性が将来の妊娠に備えて行う」こととしていますが、将来の妊娠が約束されるものではありません。
補助金が出るとはいえそれなりの費用がかかることはもちろん、すべての人にとってのメリットがあるとは限りません。特に「卵子凍結推進者」はメリットを強調しがちな側面もあり、ご自身にとって「本当に必要かどうか?」しっかりと判断することが大切です。
注意点2:クリニック選びの重要性
卵子凍結のクリニック選びは、つまり「将来の体外受精のクリニック」になります。
だからこそ、クリニック選びは本当に大切であると言えます。女性からだ情報局がこれまでインタビューをしてきた卵子凍結経験者は、民間サービスに紹介された “生殖医療専門医”がいないクリニックで採卵したら、2日間起き上がれないほどの痛みに悩まされたという方もいらっしゃいました。
「卵子凍結のクリニック選び=将来不妊治療をするクリニックである」ことを念頭に、慎重なクリニック選びが大切です。
クリニック選び
東京都の助成制度対象となる登録医療機関の公開は2023年10月16日を予定しているが、少なくとも注意しておきたい2つのポイントをご紹介します。
クリニック選びの注意点1:生殖医療専門医が常勤しているか否か
不妊治療には専門医が存在し、その専門医を「生殖医療専門医」と呼びます。
生殖補助医療についての広い知識と磨き上げられた高い技能を持つ医師を増やし、生涯にわたる研修を推進することによって、生殖補助医療の水準を高めることを目的としています。いわゆる、不妊治療の分野における「エキスパート」です。
「卵子凍結をする=体外受精をする」ということになる以上、生殖医療専門医が常勤でいるクリニックか否かは重要なクリニック選びのポイントとなります。
クリニック選びの注意点2:クリニックの将来的経営の安定性があるか否か
一定数の採卵を行なっているクリニックなどにおいては特に、公式WEBサイト等で「妊娠率」を強調するクリニックがありますが、これらはあまり信用しすぎるのは禁物。 特に卵子凍結において気をつけたいのは、通常の体外受精と違って長い人だと10年以上卵子を保管する可能性があるため、クリニックが廃業したりM&Aされたりするリスクが無いところを選びたいです。
開業間もなく安定しているかわからないクリニックや、他業種からの参入クリニックは廃業や撤退・移転などのリスクが高かったり、院長が高齢すぎても事業承継のリスクがあるのも事実です。
「女性からだ情報局」個別相談会
将来のために、大切なお金と時間をかけるからこそ、クリニック選びに迷う方は個別相談へお越しください。