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黒田恵司医師|杉山産婦人科丸の内 院長②「産婦人科には気軽に来てほしい」〜女性も男性も理解が大きく遅れている日本〜

不妊治療最前線での診療や院長としての役割と並行して、学会に参加されたり、書籍を執筆されたりと、幅広く活躍される黒田恵司医師。その忙しい日々の中で、女性からだ情報局の編集委員を引き受けてくださるなど、「正しい医療情報の発信」にも精力的に取り組まれている黒田恵司医師。
そんな黒田医師は、不妊治療の現場でいま何を思うのか。改めて尋ねてみた(全2回の後編:前編を読む)。

 

将来ショックを受けないように、若いうちから計画を

黒田先生がいま不妊治療の患者さんたちに対して思うことはありますか?

「正しい知識」につながる話でもあるんですけど、やっぱり少しでも早く来て欲しいなという思いが一番です。

もちろん個別のケースで違いはありますが、40歳を過ぎてからの不妊治療は本当に厳しい。体外受精でも40歳を超えると劇的に成功率が下がります。

 

例えば要素の1つとして卵巣機能に着目したとき、卵子を複数個採るために排卵誘発剤を使っても、卵子がそもそも1つしか採れなくて、受精や培養のプロセスの途中で脱落してしまい、子宮への移植までたどり着けない人もけっこういるんです。

 

私自身も40歳未満の患者さんだったら、たいていはどんな方でも結果につなげる自信はあるんですが、40歳を超えてくると難しい局面が多いですね。
さらにその状況を苦しくしてしまうのが、「高齢では妊娠が難しい」と知らなかった場合なんです。最近は40代で出産される方も一定数いらっしゃるので、当たり前のようにご自身も40代で妊娠できるものだと思っていて、実際はそうではないことをいきなり聞くと、大きなショックを受けている方も多いです。

 

 

昨今は「プレコンセプションケア」のように、若いうちからの健康管理も注目されていますが、若いうちから知ってもらうことは大切ですね。

そもそも生物学的にも、医学的にも、日本はきちんと情報が得られる環境が整っていないなと感じます。

海外の不妊治療だと、まずどういう治療がどのくらいの費用と妊娠率で、いまの年齢だとどんな結果が期待できるか、ということを話した上で、夫婦で話し合って決めてもらうのが一般的な流れなんです。もちろん日本でも我々は同じことを行っているんですが、その前にまず「妊娠のメカニズム」から説明しなければいけない場合がとても多い。基礎的な知識が全く足りていないから、若いうちから管理もできていないんです。

 

また、日本人は痛みに耐えるのを美徳としているからか、生理痛があっても放置している人もいます。ピルやホルモン製剤に対する否定的な先入観・抵抗感みたいなものも根底にはあるように感じます。
でも、痛いのは不調のサインである場合もあるし、仕事でどうしても忙しいタイミングがあれば、産婦人科にきちんと通えば生理をずらしたりコントロールする方法もあります。産婦人科に通うハードルももっと下げていきたいと思っています。

 

黒田医師が院長を務める杉山産婦人科 丸の内

 

実は以前に大学で授業をやったとき、「生理痛は当たり前のものではなく、不具合のサインです。なかなか周りに相談しにくい人は個別に連絡をください。」と学生に伝えたことがあるんです。そうすると4-5人くらいから連絡が来て、意外と多いことに驚きました。生理痛がひどくても、そもそもそれが当たり前だと思っていたり、周りに言えなくて放置したままの人たちをどう受診につなげていくのかは課題ですね。

 

もう1つ、将来の妊娠を考えたときに、日本の若い女性を見ていて心配なのは、やせすぎの方が非常に多いことです。世の中全体がスリム志向なのはわかるんですが、日本は18歳未満だと3割くらいの方が痩せすぎに分類されます。これは海外では考えられないくらい、世界で一番やせているんですね。

 

やせているって社会的には良いことかもしれないんですが、妊娠を考えると「低出生体重児が増える」とか「早産しやすくなる」とかだけじゃなくて、実は「子どもが成人したあとの生活習慣病」とか、最終的には子どもの将来の健康にまで影響が及ぶことがわかってきています。

 

もちろん肥満もダメですが、日本はこれだけ豊かで栄養状態の良い国ですから、やせすぎもダメだということ、妊娠にはほどよい体型を保っておくべきだということが、情報としてもっと拡がるといいなと思っています。

 

 

妊娠の予定があればできるだけ早くから、準備を始めよう

現代は30代に突入しても「子どもはまだまだ先で」という人も多いですね。

晩婚化も進んでいますし、キャリアの問題などもあって、出産を予定する年齢も高齢になってきているのだと思います。

 

ただ医者の立場から言えば、妊娠の予定があればできるだけ早い段階から知識を身につけたり、検診を受けて準備をしておいて欲しいと思います。まだ産む予定がなくても産みたい年齢の数年前から準備して、できれば一度産婦人科で相談しておくのが理想です。

 

私は日々不妊治療の患者さんと向き合いますが、症状や年齢に応じた妊娠成績まで説明して、その上で「やるかやらないかは夫婦でよく相談して決めてください」とお伝えすることも多いです。不妊治療の保険適用が拡大されてもある程度の費用はかかりますし、妊娠できる年齢にも限界がありますから。

 

そのときにいちばん言われるのが、「もうちょっと前にこの情報を知れたらよかった」といことです。結局のところ時間や年齢は取り戻せないですから、そこは早いうちから知って、考えておいて欲しいと思います。

 

 

一方で、女性の社会進出が進んでいく中で、年齢との兼ね合いは難しいポイントですね。

出産年齢が高齢化しているのは、働く女性が増えてきていることとも関係していますよね。
総務省の労働力調査によると、2017年の日本では就労者の約45%が女性で、そのうち70%以上が生殖年齢の女性なんです。

 

つまり、「妊娠を考えているけれど、仕事とどう両立させようか」といった悩みを抱えていらっしゃる方もたくさんいるのだと思います。

 

もちろん仕事やキャリアも大切だと思うのですが、妊娠の適齢期というか、妊娠できる時期というのも限られている部分があるので、そこは企業もそうですし、男性もサポートしていけるように働きかけていきたい。

 

企業でも不妊治療をサポートする動きを見せているところが無くはないんですが、やっぱりまだ一部の企業に限定されているので、不妊治療の保険適用が大きく拡大したように、企業における不妊治療と就労の両立ができるシステム作りを国がもっと積極的にサポートしてくれるといいなと思っています。

 

 

男性の協力をどうやって引き出せば良いのか

不妊治療はカップルで行うものですが、男女の違いについてはいかがですか?

おっしゃる通り不妊治療はカップルで行うものですが、いつも2人で一緒に診療に来たりととても協力的な男性がいる反面、非協力的な男性は一定数います。

 

不妊症のスクリーニング検査として、精液検査は必ず行うように説明しています。やっぱり男性側も調べないと、どこに異常があるかわからないですから。不妊の原因が女性に無く男性側にあったとしても、体外受精などをやるとなれば、基本的に女性が通院しなければいけないですし、知識についても女性がご自身で色々と調べて、男性よりも詳しいケースが多いです。

 

昨年から不妊治療の保険適用が大幅に拡大しましたが、不妊治療って通院回数が多くて仕事に影響が出やすい反面、治療費が高額で仕事を継続しないと治療を継続できないという実情があって、その板挟みに苦労しやすい問題があります。我々産婦人科と公衆衛生学の先生が共同で行った「不妊治療と就労の両立」のアンケート調査だと、不妊治療を行っている女性の83%が「不妊治療と仕事の両立が困難」だと感じていて、さらに、1割近くの人が「不妊治療に関連して職場でハラスメントを受けている」という結果でした。

男性が非協力的で治療がうまく進まなかったり、不妊治療に対するハラスメントが当たり前に起こってしまうことのないように、男性にも理解を深めてもらったり、男性間で情報共有するプログラムができないかなと考えています。

1点最近いいなと思ったのは、体外受精が保険適用になって、体外受精を始める前に男性とも顔を合わせることが必須になったんです。直接来院することが難しい場合は、女性の携帯電話を使ってリモートで説明することも多いです。きちんと男性とも顔をあわせて、「何を考えているのか」「質問はないか」といったことを聞くようにしています。

 

そうすると「自分も何か(女性を)サポートした方がいいか」「どういったサポートができるか」を聞いてくる男性が増えてくるようになりました。実際に直接話をしてみると、本当に不妊治療をやっているんだと実感するのかもしれないですね。

 

 

男性側のサポートとして、どんなことをお勧めされているんですか?

僕がよく言うのは「これは女性だけの治療じゃなくて、2人で行うものなので、ぜひご主人もサポートしてあげてください」ということです。

 

治療の中では落ち込んでしまったりするような場面もあります。やはり日々一緒の時間を過ごしているのは家族ですから、家族として2人が寄り添い、共有するというのは大切なんだろうなと、患者さんを見ていて思います。

 

でも、最終的に男性にいかに協力的になってもらえばいいのかというのは、僕自身もまだ結論が出ていないです。「夫が非協力的で、どうすればいいですか」という相談はよく受けますが、家庭の問題で介入できない領域もありますし、難しいですね。

 

不妊治療は、不妊の原因が男性にある場合であっても、結局女性の通院回数や負担が多かったりします。基本的な男性の理解は、少しずつ社会で積み上げていくしかないのかも知れません。

 

もっと気軽に産婦人科に行ける雰囲気づくりを

最後に、不妊治療に限らず、女性の生涯ヘルスケアについてメッセージをお願いします。

不妊治療だけじゃなく、女性にとって生理を始めとした自分の体との向き合いって大変なことが多いと思うんです。こればかりは私も男性なので、本当に生理や出産の痛みがわかるかと言えば、わからない。その中で医学的な知識や経験からお話しすることしかできません。

 

でも、女性が自身の体と向き合ってくれるからこそ、妊娠して、新しい命が生まれていく。社会の中で、女性の体に備わったその役割は必要なものなんです。

 

ただ、その分女性は社会生活と健康管理や妊娠・出産を両立させたり、痛みや症状がある場合には、それとうまく付き合っていくなどの負担がある場合があります。困ったら、ぜひ気軽に産婦人科にかかってもOKだということを覚えておいてください。

 

産婦人科には、何かしらそういった体の不調や、家族計画や、キャリアとの付き合いかたを教えてくれる先生もたくさんいると思います。生理痛などの不調でつまづいたりするよりも、女性のみなさんがのびのびと生きていけるサポートをするのが、私たち産婦人科の役目だと思っています。

 

 

目の前の1組1組の患者さんはもちろん、黒田医師の目は常に、「どうすれば社会全体で幸せに子どもを授かるカップルが1組でも増えるか」というところに向いている。そして、お話を聞けば聞くほど、その眼差しが真っ直ぐ、揺らぎのないことを感じる。信じられないほど目まぐるしく忙しい日々を送られているだろう中で、診療に、学術に、啓発にと普段の研鑽を積み重ねられる姿には、1人の人間として尊敬の念が絶えない。
これからの黒田医師のますますの活躍をお祈りするとともに、これから妊娠・出産を考えられている方や、不妊治療中の方には、ぜひ黒田医師監修の記事もチェックしてみて欲しい。

 

【この先生が勤務しているクリニックを見る】

杉山産婦人科 丸の内

 

【この先生の著書を見る】

▷「データから考える不妊症・不育症治療」メジカルビュー社

▷「Treatment Strategy for Unexplained Infertility and Recurrent Miscarriage(原因不明不妊症・不育症の治療戦略)」Springer社

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