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不妊治療まとめ②:不妊原因を特定するための検査

妊娠を望む方の中には、自分やパートナーが「もしかして不妊かも?」と感じても、どこに相談したらいいのかわからず悩んでしまっている方もいるのではないでしょうか。「不妊治療」という言葉は知っていても、治療内容がわからないと、なかなか一歩を踏み出せないもの。
そこで今回は、知っておきたい不妊治療の内容について、今回は、杉山産婦人科丸の内院長で、順天堂大学産婦人科学講座非常勤講師の黒田恵司医師にお話をお伺いして、不妊治療で行われる検査についてまとめました。

※「膣(ちつ)」の表記は、医学的には「腟」が正式な表記ですが、こちらの記事では読みやすさを優先してより一般的な「膣」を使用しています。

検査は男女ともに受けるもの?

不妊の原因を知りたいとき、どのような検査をするのでしょう。
不妊となる原因は男女ともにあるため、原因を探して治療を進めていくためには男女それぞれ検査を行うことが大切です。

 


 

 

女性が受ける一般的な検査

女性が行う不妊症の検査は、主に2つのパターンがあります。ほとんどの方が受ける「一般的な検査」と、その検査の結果を受けて子宮内膜症などの疾患が疑われる場合などに受ける「特殊な検査」です。

 

女性が行う一般的な検査には、主に以下のものがあります。

 

クラミジア検査

クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマチスというウィルスによる性感染症です。感染すると、子宮頸管や卵管が炎症を起こしたり、卵管が癒着・閉塞を起こして不妊の原因になったりすることもあります。さらに、子宮や卵管で起きた炎症により、子宮内膜が炎症を起こす子宮内膜炎や、受精卵が卵管内で着床してしまう子宮外妊娠などのリスクが高まります。
クラミジアの有無については、子宮頸管粘液のPCR検査もしくは血液による抗体検査で判定します。

 

 

ヒューナーテスト

ヒューナーテストは、排卵日の性交後の子宮頸管粘液を採取し、その中の精子の有無と運動率(どの程度精子が運動しているか)を調べる検査です。
頸管粘液は排卵前のタイミングで、精子が通過しやすい状態に変化します。この検査で異常がある、つまり頸管粘液の中の精子の状態が悪い場合は、もともとの精液所見に異常がある、もしくは精液検査が正常であるにもかかわらず子宮内に精子が入ることができていないことが考えられます。

 

 

AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査

AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値は、卵巣内に残存する卵子の数と相関するため、卵巣予備能を調べることができます。AMH値に応じて、人工授精や体外受精などを検討していきます。

 

 

基礎体温測定

基礎体温とは、生存のために必要最小限のエネルギーを消費しているときの体温を意味します。つまり、寝ている時の体温のことです。基礎体温を測定することで、体内の女性ホルモンの量の変化や、いつ排卵したかなどを調べることができます。
基礎体温を測る際は、専用の体温計を使います。朝起きたタイミングで体温計の先を舌の付け根にあてて、体温を測定します。最近では、基礎体温を記録するアプリを使って、基礎体温の変化を確認する人もいます。

 

 

内診・経膣超音波(経膣エコー)検査

膣の中を見て触れることで異常を確認する「内診」と、膣(ちつ)に超音波プローブという直径約1.5-2cmの機械を挿入して子宮や卵巣の状態を確認する「経腟超音波検査(経腟エコー)」の2種類があります。また、経腟超音波検査では、手で腹部を押して痛いところがあるかどうかの確認も行います。
これらの検査を通じて、子宮筋腫・卵巣のう腫・子宮内膜症など、不妊の原因となる異常がないかを確認します。

 

 

子宮卵管造影検査

受精卵が着床する場所である「子宮」や、卵子と精子の通り道である「卵管」の異常が不妊の原因となっていることがあります。そして、子宮と卵管の異常を見つけるために行うのが、この子宮卵管造影検査です。
子宮卵管造影検査では、子宮の入り口から子宮内へ造影剤という液体を注入し、レントゲンを使って造影剤の流れを確認します。この検査によって、子宮の形に異常がないか、卵管が狭くなっていないかを確認することができます。
この検査は、造影剤を注入するときに少し痛みをともなうことがあります。しかし、この検査をした結果、卵管の通りがよくなり、自然妊娠する可能性が高まることもわかっています。そのため、不妊治療を行う前に受けておきたい大切な検査です。

 

 

血液検査

採取した血液をもとに、妊娠に関わるホルモンの異常や糖尿病などの病気があるかどうかを検査します。
ホルモン検査では、女性ホルモン・男性ホルモン、卵巣を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)・黄体化ホルモン(LH)のほか、母乳を分泌するプロラクチンや甲状腺ホルモンなど、さまざまなホルモンの検査が含まれています。
体内のホルモンの量は、月経周期によって変化します。その為、採血は月経期と排卵後の黄体期の2回に分けて行います。

 

 

女性が受ける特殊な検査

上記のような検査の結果をふまえて、病気の有無を確認するために、以下の検査を行うことがあります。

これらの検査の中には、クリニックから紹介状をもらい、大病院で行うものもあります。

 

腹腔鏡検査・子宮鏡検査

腹腔鏡(ふくくうきょう)検査は、体内にカメラを入れて、子宮や卵管の異常を確認する検査です。
手術室で全身麻酔をかけて、おへその辺りから細いカメラを入れて、子宮や卵管を観察します。サイズにもよりますが、卵巣や子宮に腫瘍(卵巣のう腫・子宮筋腫など)が確認された場合は、同時に切除することができます。また、卵胞が育たず排卵しにくくなる多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)の手術も同時に行うことができます。

数cmほどの傷跡が腹部に残る検査ですが、一回の検査で、あらゆる不妊の原因を探ることができます。
子宮鏡検査は、子宮の入り口から内視鏡を挿入し、受精卵が着床する場所を直接観察する検査です。子宮鏡検査は腹腔鏡検査とは異なり、お腹に傷をつけることがなく、全身麻酔も必要ありません。

この検査では、ポリープや筋腫、内腔の癒着(子宮の内側の膜がへばりついている状態)など、子宮の中の異常を確認することができます。

 

骨盤MRI検査

骨盤MRI検査は、CT検査のように大きな筒状の装置に入り、電磁波を使って体内の様子を調べる検査です。

子宮や卵巣の状態を細かく調べることができるのがその特徴です。そのため、子宮筋腫・子宮内膜症・卵管水腫(らんかんすいしゅ)・など様々な不妊の原因を探ることができます。

 

男性の精液検査

男性の不妊の原因は精子そのものや精子をつくる機能などにあるのが主で、検査は精液検査泌尿器科的な検査に分けられます。

 

精液検査

精液検査は、不妊検査を受診する男性のほとんどが受ける検査です。

また、必要に応じて、エコー検査や採血などの泌尿器科的検査を行うことがあります。
精液検査は、精液を調べて、量や濃度、運動率・運動の質、形態、性感染症への感染有無などを検査します。
検査方法は、2~7日の禁欲期間(射精しない期間)のあとに、用手法(マスターベーション)で精液を採取して行います。精液は自宅で採取し病院に持参することもできますが、正確な情報を得るためには精子を採取してから30分~1時間ほどで検査する必要があるため、病院で採るのが望ましいです。
また、男性の精液の状態は日によって変わるため、1度検査をして出た結果だけを見て判断せずに、2回以上検査を行うこともあります。

 

 

男性の泌尿器科的検査

泌尿器科的検査では、主に診察・採血・尿検査・エコー検査の4つを行います。これらの検査結果をふまえて、必要に応じて特殊な検査を行うことがあります。

 

診察

まずは問診から、不妊症に関わる病気の既往の有無、現在の性生活の状況(勃起や射精の状態など)を確認します。
そして生殖器を触診し、陰嚢や睾丸の大きさ等を確認していきます。また、精巣の上にある精索(せいさく)に瘤のようなもの(精索静脈瘤)があるかも確認します。
精索静脈瘤では、精巣の上を流れる血管がふくらんだ結果、精液の温度が上がってしまい、精子のDNA異常や精子の運動率の低下をもたらすと考えられています。その結果、人工授精や体外受精などの成功率が下がってしまうことがあります。次に説明する超音波検査と触診で精索静脈瘤が確認された場合、適切な治療(手術)を行えば精索静脈瘤は改善する可能性が高いといわれています。

 

 

超音波(エコー)検査

陰嚢に超音波プローブを当てて陰嚢・精索・精巣の状態をチェックします。精索静脈瘤を診断するには最も簡単な検査方法で、触診よりも違和感の少ない検査です。また、精巣がんなどの他の病気を見つけることもできます。

 

 

採血検査

採血によって、血液中の男性ホルモン(テストステロン)や性腺刺激ホルモン(LH、FSH)、場合によってはプロラクチンなど、さまざまなホルモンについて調べます。また、精子形成に関係する染色体や遺伝子の検査を行うことがあります。この検査によって、精液の異常、勃起障害、射精障害の原因を探ることができます。

 

 

特殊な検査

一般的な検査の結果をふまえ、次は症状に応じて行う特殊な検査があります。

たとえば、精嚢や射精管の形態を調べるMRI検査や、精子の機能を調べる検査、精巣での精子をつくる状況を調べる精巣生検、プロスタグランジンという薬を陰茎に投与して勃起能力を調べる検査などが行われます。*3

 

 

不妊治療を受けているカップルの50%程度は男性側にも原因があるとされているため、男性不妊の原因を探ることは、その後の不妊治療の方針を決めるためにはとても大事なこと。不妊治療はパートナーで協力しあうことが大切ですね。

 

原因がわかったら、いよいよ治療に入ります。
実はあまり知られていないのですが、不妊治療は順番が決まっているんです。それはどのようなものなのでしょうか。

次の記事では、不妊治療の順番について詳しく見ていきます。

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