『チョコレート嚢胞』とはどんな病気なのでしょうか。そして、どのくらいの人が罹患(りかん)しているのでしょうか。それにはまず、「子宮内膜症」から理解する必要があります。
「子宮内膜症」と「チョコレート嚢胞」についてその概要を知り、身近な不調の1つであることを認識しましょう。
今回は、チョコレート嚢胞の概要について、東京歯科大学市川総合病院産婦人科准教授、福島県立医科大学特任教授の小川真里子医師にお伺いしました。
チョコレート嚢胞の概要と“子宮内膜症”
チョコレート嚢胞: 「子宮内膜症」の一種
チョコレート嚢胞は、「子宮内膜症」と呼ばれる病気の一種です。
「子宮内膜症」という言葉は聞いたことはある人も多いのではないでしょうか。
女性の子宮の内腔(赤ちゃんが育つ場所)を覆う子宮内膜組織は、毎月女性ホルモンの作用を受けて妊娠に備えて増殖します。子宮内膜は妊娠が成立しなかった際にはがれ落ち、排出されます。この仕組みが月経ですね。
「子宮内膜症」は、子宮内膜に似た組織が子宮の中以外の場所で発生することで起こる病気です。
全身の様々な臓器に発生することがありますが、ほとんどの場合は卵巣などの骨盤内の臓器に発生します。(*1)
これが卵巣にできた場合(内膜病巣)、本来は月経時にはがれ落ちたら経血として排出されるはずの血液が、卵巣の一部に嚢胞を作ってたまっていきます。たまった古い血液がチョコレート色をしているので、これを「チョコレート嚢胞」と呼びます。 (*1)
チョコレート嚢胞:発症割合とその年齢
「チョコレート嚢胞」という言葉に耳なじみが無かったとしても、実はこの病気は妊娠を望む女性たちにとって他人事ではないんです。というのも、チョコレート嚢胞は妊娠出産のできる年齢の女性の約10人に1人の割合で発症するといわれています。
20~30代の女性で発症することが多く、中でも30~34歳がもっとも多いとされていますが、10代で月経痛が強い女性も、子宮内膜症の可能性があるといわれています。(*2)
チョコレート嚢胞を引き起こす、子宮内膜症の原因
実は、子宮内膜症が起こる原因は、まだはっきりとは解明されていません。(*3)
月経のときにはがれおちた子宮内膜が、卵管から腹腔内に入り、生着して起こるという説があります。
では、自分がチョコレート嚢胞であるかどうか、どのように気付けば良いのでしょうか。
次の記事では、チョコレート嚢胞の初期症状と検査について詳しく見ていきます。