多くの人が発症しているとされるチョコレート嚢胞。チョコレート嚢胞になった場合、妊活や不妊治療にはどのような影響があるのでしょうか。
今回は、チョコレート嚢胞の不妊への影響について、東京歯科大学市川総合病院産婦人科准教授、福島県立医科大学特任教授の小川真里子医師にお伺いしました。
不妊への影響
チョコレート嚢胞は不妊の原因となるのか?
チョコレート嚢胞、そして子宮内膜症が不妊の原因となるのか、みなさん気になるところだと思います。
結論から言えば、チョコレート嚢胞を含む子宮内膜症は、不妊の原因となります。子宮内膜症になると、卵の輸送が妨げられたり、卵胞の発育がしにくくなったりするからです。
影響①:卵の輸送の妨害
子宮内膜症により妊娠に重要な役割を担う臓器同士がくっついてしまう(癒着する)と、卵巣からの卵の放出、卵管への卵の取り込み、卵管による卵の輸送が妨げられます。卵が卵巣から卵管を経て子宮に向かう、という正しいルートを通らないことで、不妊につながってしまうのです。
影響②:卵胞が発育しにくい
骨盤のなかで炎症が長い間(慢性的に)起きていると、骨盤内に腹水という液体が貯まります。この腹水の中にふくまれる免疫細胞やサイトカインとよばれる物質が増加することで、卵胞の発育が障害され、卵の質が低下し、受精率、妊娠率が低下すると考えられています。(*1)
チョコレート嚢胞:妊娠率への影響は?
チョコレート嚢胞を含む子宮内膜症は、実際どのくらい妊娠率に影響があるものなのでしょうか。
子宮内膜症の女性の妊娠率は24~50%ほどですが、重症の場合は10%以下との報告があります。
不妊期間が短く、卵管に異常がない軽度の子宮内膜症であれば、タイミング法(排卵日を予測して、妊娠可能性の高いタイミングで性交渉を行う不妊治療法)からスタートし、自然妊娠を目指すことを検討しても良いかと思います。ただし、卵管嚢腫が大きかったり、卵管に異常がある方は、手術や体外受精を考慮する必要があります。(*2)
では、チョコレート嚢胞と診断された場合、どのような治療を受け、どのくらいの期間を経て完治に向かうのでしょうか。次の記事では、チョコレート嚢胞の治療法と治療期間について詳しく見ていきます。